2020/8/14山陽新聞に掲載されました
働き方改革最前線(5)サードプレイス 移動時間短縮し効率化
「ワーケーション」も注目
ワークスマイルラボのサテライトオフィス。「共有型」として他社にも貸し出す
「おはようございます。本日は訪問先で商材と併せ、セミナーも案内します」
午前8時半の朝礼で、オフィス機器販売・ワークスマイルラボ(岡山市南区福浜町)の向坂咲穂さん(25)がパソコンの画面に向かって1日の予定を報告する。
向坂さんがいるのは、本社でも自宅でもない「第三の場所(サードプレイス)」。同社が仕事用のスペースとして設けた「サテライトオフィス」だ。JR岡山駅から徒歩5分、岡山駅前商店街の一角にある。
向坂さんはパソコンに関するサポートサービスを担当し、取引先は岡山県内全域に広がる。岡山市中心部の顧客を訪ねる日はサテライトオフィスに出社。オンラインで朝礼に参加して取引先に向かう。週2回ほど利用しており「移動時間を短縮できるのが一番のメリット」と言う。
サテライトオフィスには、ウェブ会議での商談に対応できる個室や会議室なども整う。従業員約30人の約7割が活用し、柔軟な働き方を支える欠かせない拠点となっている。
「家だと集中しづらい」「コピー機を使いたい」
同社は2016年、社外で働く「テレワーク」制度を県内でいち早く導入。子育て中の女性社員を中心に在宅勤務が広がる中で、さまざまな要望も挙がってきた。制度をさらに充実させようと18年、第三の場所としてサテライトオフィスを開設した。
「働く場所を自由に選択できることで無駄を省き、業務を効率化できる」と石井聖博社長(41)。移動時間が減って生産性が向上し、残業時間の削減にもつながっているという。
新たな拠点づくりにハードルとなるのがコスト面。そこで同社はサテライトオフィスを「共有型」とし、他社にも貸し出している。当初は会議室だけの利用が多かったが、新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークが一気に普及。「サテライトオフィスへの関心も高まってきている」と石井社長は話す。
新型コロナの影響で、こうした拠点づくりが急速に進んでいる。ザイマックス不動産総合研究所(東京)が全国の企業に行った調査では、新型コロナ対策として自社のサテライトオフィスを利用したのは87社。このうち、コロナ禍を機に初めて導入した企業は3分の1に上った。
休暇に出掛けた先でくつろぎながら仕事をする「ワーケーション」もにわかに脚光を浴び、政府が普及に本腰を入れ始めた。
ウェブサイト制作のレプタイル(津山市田町)は、ワーケーションでの活用を見据えた複合施設「INN―SECT」(同市二階町)を昨年オープン。3階建ての施設は、シェアオフィスや18床のゲストハウス、カフェやミーティングルームを備える。
施設の運営責任者・武川和憲さん(34)は「施設への注目度が高まっているはず。地域の魅力を楽しみながら、サードプレイスとして活用してもらいたい」と話す。場所にとらわれない働き方は、今後さらに広がっていきそうだ。