建材マンスリー2025年4月号に掲載されました
創刊60周年を越える歴史ある業界情報誌、住友林業発行の「建材マンスリー2025年4月号」に掲載されました。
モノを売るだけではない
働き方提案という新たな価値創造で
事務機器販売の在り方を変える
《 事務機器販売の先にある“より良い働き方”という価値を提供 》
経営危機に陥って事業の再定義を実 行し、”売るモノ” ではなく”売り方”を変え、V字回復を遂げた事務機器販売の老舗企業がある。自社の働く環境そのものを”研究所”として働き方改革を実践し、「働 き方提案」という新たな価値を創造したWORK SMILE LABOだ。
「1911年に岡山市で墨や筆を取り扱う文具店として始まり、その後は事務用品やオフィス家具、OA機器などの販売で績を伸ばしてきました。しかし、リーマン ショック以前から業界は成熟期に突入し、価格競争を避けられず倒産の危機に陥っていました。そんな折、長年付き合いのあった顧客企業の社長から、復活の契機となる一本の電話が入りました。 それは、メー カーはどこでもよいので、今使っているものよりも処理速度の速いパソコンが欲しい」という依頼でした。そこで気づいたことは、顧客が求めているのは、処理速度が上がることで生産性が向上したり働く社員の満足度を高めたりすることなのではないか。モノを販売する先にある、よりよい働き方を本当の価値として提供していくべきだと思い至ったわけです」
ーーそこで、売るモノを変えるのではなく、提供する価値を再定義し「働き方提案企業」として再出発を図った。まず着手したのが、働き方を提案するために自社で良い事例をつくること。 全社一丸となって課題を出し合い、働き方や社内規則、根本的な企業風土の一新に取りかかった。
「代表的な取り組みは、当時はまだ珍しかったテレワークや紙の電子化です。 病気 がちな子どもを持つ社員の”急な早退や欠勤を余儀なくされ苦労している”という声を受け、家でも働けるようにと始めました。 さらに、成功事例を導入した自社オフィスを”働き方のショールーム”として公開しました。 働き方提案は客先での説明は難しいですが、 実際に見てもらえばノウハウや効果などが伝わりやすくなります。 例えば テレワークの様子を見学した顧客からはすぐに「ぜひ取り組みたい。うちならいくらでできるのか」と反応がありました。まねしたいと思ってもらえる事例をつくり続ければ独自の価値になると、大きな手応えを感じた瞬間でした」
ーー従来のモノ売りのように”それが欲しい”ではなく、“それを実現したい”という価値への再定義が、新たなチャンスにつながっていった。
《 独自の評価制度の策定で社員のマインドから変革 》
ーートライ&エラーを繰り返し、社員から募集した働き方改善案を実践し続けている同社。 固定席を持たないフリーアドレスの導入やデジタルツール活用などの大きな改善から、文具の共用化や退社時間宣言カードの活用などすぐに実行できる事例まで、現在は約70の取り組みを公開している。
「売り方を変えると、顧客との関係性も変わりました。当社がアドバイスする側になり顧客から感謝されると、社員の仕事に対するモチベーションも高まります。また、中小企業同士は共通の課題がありますから共感を得やすく、自社で試しているからこその説得力が信用につながっています」
ーー働き方改革への注目度が高まっていたことも追い風となり同社の業績は急速に回復。 中小企業のモデルオフィスとして確固たる地位を築き上げた。他社に展開できる様々な働き方の改善案ができた背景には、独自の評価制度により、生産性向上との両立を実現してきたことがある。
「重要なのは、成果を見える化し評価すること。 例えば、挑戦力や目標達成意欲といった定性的な内容も、何を指すのかを明確にして評価できるようにしています。 評価制度は会社が求めることを理解してもらうためのものです。それをしっかり体現している社員を評価すれば、社員のマインドを変革し良い企業文化が構築されます」
ーー全国の中小企業に働き方改革を拡大させるため、2022年に中小企業働き方支援協会を設立。同社のように法人顧客を持つ地域密着型企業を募り、地方の中小企業に展開するネットワークを構築している。
「働き方改革につながる良い商品やサービスの情報をいち早くキャッチし、会員企業を通じて中小企業に導入支援を行います。このように裾野を広げ全国の中小企業の働き方改革に貢献したいです。高い生産性を実現できる日本の中小企業のモデルになれるよう、今後も働き方を進化させていきます」