2020/12/1山陽新聞に掲載されました
【横断縦断 エリア経済】「脱はんこ」動き加速 生産性向上、経費削減
地方経済
文書を電子化し、押印を廃止するといった「脱はんこ」の動きが岡山県内の企業で加速している。新型コロナウイルス禍を機にテレワークが普及し、自宅などで文書を作る必要性が高まっているためだ。生産性の向上や、ペーパーレス化による経費の削減にもつながっている。
菓子製造のカバヤ食品(岡山市北区御津野々口)は、商品開発や品質管理の部署で6月から「デジタルはんこ」を本格導入。電子署名システムを応用し、PDF文書にパソコン上で押印できるようにした。
これまでは文書を起案・印刷した後、各部署に回して決裁印を押してもらう必要があり、時間と手間がかかっていた。同社は「パソコンでやりとりすれば、どこにいても押印できる上、紙やインクも節約できる」とする。
自動車部品製造のクレファクト(総社市井尻野)も、10月から段階的に社内文書を電子化。「主任、課長、部長…」などと何人も押印する慣習を改め、決裁者の人数を絞った。横内義雄社長は「業務の効率化に加え、権限委譲により一人一人の責任感が高まった」と話す。
トマト銀行(岡山市北区番町)は10月、顧客サービスの手続きに電子署名を導入した。渉外担当者が顧客の依頼で預金を引き出す際、従来は通帳を預かって受取書を発行し、返却時に顧客が押印した受取書を回収していたが、預かりと返却の際にタブレット端末に署名してもらう方式に変更した。はんこを扱う必要がなくなり、顧客の利便性も向上したという。
電子契約を取り入れたのは、オフィス機器販売のワークスマイルラボ(同市南区福浜町)。コロナ禍で取引先を訪問しにくくなったため、契約書の押印をやめて電子署名を活用。5月からインターネットでやりとりしている。ノウハウを提供するため、8月には一般企業向けの導入支援セミナーも始めた。
医療用品製造のダイヤ工業(同古新田)も、請求書の電子化を検討中。システムの選定や、セキュリティーなど課題の洗い出しを進めている。
コロナ禍では、日本のデジタル化の遅れが浮き彫りになった。政府は企業の支援を充実させ、来年9月にはデジタル庁を新設する方針を示している。競争力を高め、社員の働き方改革を進めるためにも、地場企業の取り組みはさらに広がりそうだ。