人事評価制度の導入や見直しの際に、知っておきたいのが「評価制度のトレンド」です。
社会情勢や働き方の変化によって、評価制度にも多種多様なトレンドが生まれていますが、自社のビジョンや風土に合ったものを導入することで、業績を伸ばしたり、効率的に人材育成したりすることができるでしょう。
しかし、どんなトレンドがあるのか、自社にどれが適しているか分からないという場合も多いはず。
ここでは、評価制度の最新トレンドについてメリット・デメリットを交えつつ紹介します。
またどの評価制度を導入すべきか、その判断ポイントをまとめました。
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評価制度のトレンドが生まれる背景は?
なぜ評価制度にトレンドが生まれるのか、その背景についてくわしく見ていきましょう。
戦後1945年以降、主流だった評価制度は「年功序列型」で、年齢と勤続年数によって従業員を評価し、昇格や賃金の取り決めをしていました。年功序列型では、労働力を確保すること、優秀な人材を囲い込むことに重点が置かれていたのです。
しかし、1990年代のバブルが崩壊すると、一人の従業員を定年まで雇い続けるのが難しくなり、当時、欧米で主流だった「成果主義型」を取り入れて、従業員の目標の達成度合によって待遇を決める企業がぐんと増えました。
成果主義型の評価制度では、個人の成績によって賃金や待遇が変わるため、モチベーションアップにつながる半面、チームワークが軽薄になりやすく、職種によっては評価しづらいといった懸念点がありました。
そして2018年から始まった「働き方改革」では、多様な働き方の実現、正規・非正規での格差解消が目標とされ、評価制度は公正であること、個人の働き方を尊重した上で待遇を決めることが重要視されるようになりました。
そうした社会情勢の変化を踏まえ、評価制度はその時々で見直され、さまざまなトレンドが誕生しています。
参考資料:厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」
評価制度のトレンドを取り入れるメリット
評価制度のトレンドを導入するメリットにどんなものがあるか確認していきましょう。
評価制度のトレンドには、業績における評価よりも、それぞれの役割においてどんな働きをしたのかに重点をおくなど、多角的な視点で評価を行うものが多くあります。
その結果、従業員一人ひとりに公正な評価がしやすくなり、仕事へのモチベーションを高めたり、優秀な人材流出を防いだりする効果が期待できます。
その他には、成果主義をもとにした評価制度で何らかの不具合が生じている場合、トレンドを組み込むことで、社内でのコミュニケーションが円滑になり、目標達成に向けて一丸となり取り組みやすくなることもあるでしょう。
評価制度のトレンドを取り入れるデメリット
評価制度のトレンドを取り入れるデメリットについても確認していきましょう。
評価制度では自社の風土に合うのか、その見極めが重要になります。
仮に年功列型の評価制度から移行する場合は、ベテラン社員からすぐに受け入れられず反発を受けることもあるかもしれません。
評価制度のトレンドについては、他の企業が成功しているからという安易な考えで取り入れてしまうと、混乱や戸惑いが生じてしまい、従業員への負担を増やしてしまったり、業績の低迷につながったりするおそれもあります。
最新!評価制度のトレンド7選
最新の評価制度のトレンドに加え、どんな場合におすすめなのかまとめました。
リアルタイムフィードバック
半年や決算期での人事評価では、適切なフィードバックや評価がしづらい、という場合におすすめなのが「リアルタイムフィードバック」です。
リアルタイムフィードバックでは、2週間に一回、1ヶ月に一回など高頻度で、部下と上司でミーティングの場を設け、目標の振り返りやフィードバックを行います。
その時々で、適切な目標をたてることが可能になるだけではなく、タイムリーな評価ができる点もメリットでしょう。
注意点としては、評価者の負担にならないよう、頻度やミーティングの内容を決めることが大切です。
360度評価
360度評価とは、その名の通り、さまざまな角度から従業員の評価を行う制度で、上司からだけではなく、同僚からの評価も重視されます。またクライアントからなど、社外からの評価が加味されることもあるでしょう。
360度評価を行うことで、多角的に従業員の評価ができるだけではなく、従業員の新たな面の発見にも役立つので、効率的な人員配置にも活かせます。
注意点としては、評価があいまいにならないよう、明確な評価基準をつくらないといけません。また、よい評価が欲しいがために、馴れ合いのある職場にならないように注意を払う必要もあります。
バリュー評価
目標達成だけではなく、一歩踏み込んだ行動力を評価したい場合に検討したいのが「バリュー評価」です。会社の方針や価値観をふまえて、どれだけ行動できたのかを評価します。
注意点としては業績評価とは違い、数字での評価がしづらい点があります。また評価者の主観が入らないよう、評価基準のグレード分けを作ることや、会社の方針を浸透させていくことも大切です。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、優れた業績を出す人に共通する「行動特性」をもとにした評価制度をつくり、社内に浸透させていく制度です。
具体的な評価基準がつくれるため、人材育成にも役立ちます。導入に際しては、評価基準や評価項目を作るために、優秀な人材にインタビューをしたり、データ収集・分析を行ったりするなどさまざまな準備が必要です。
OKR
OKRとは、Objectives and Key Resultsの頭文字をとった略称で、「目標と主要な成果」を意味しています。会社・チーム・個人の達成目標をリンクさせ、主要な成果を達成するための評価制度です。
OKRでは、企業の達成目標・主要な成果を決め、それをベースに、各チームでOKRをつくり、個人のOKRへと細分化していきます。
デメリットとしては、マルチタスクを担う従業員が多い中小企業の場合、目指す成果が多くなってしまうと、個人の負担が多くなってしまうこともあるでしょう。また個人の達成目標が高く設定される傾向にあり、モチベーション低下につながる場合もあるので注意が必要です。
ノーレイティング
ノーレイティングとは、従業員をS・A・B・Cといった「ランク付けをしない」評価制度です。リアルタイムに目標設定を行い、フィードバックを行う中で、その都度従業員を評価していくのが特徴です。
ノーレイティングでは、上司と部下でのコミュニケーションが活性化し、環境の変化に柔軟に対応しやすくなるメリットがあります。
デメリットとしては、リアルタイムフィードバックと同様に、管理職の負担になりやすいことや、フィードバックしていくためのスキルが必要になる点です。
ピアボーナス
社内のコミュニケーションを活性化させたい場合におすすめなのが、「ピアボーナス」です。同僚や仲間を表すピア(peer)とボーナス(bonus)を掛け合わせた言葉で、従業員同士で評価を行い、報酬を贈り合う制度です。
主な運用方法としては、ピアボーナスによってポイントをため、そのポイントを商品やお金に交換します。
注意点としては、評価制度の仕組みを作るために導入コストがかかる点が挙げられます。
どの評価制度を導入すべき?3つの判断ポイント
評価制度にはさまざまなトレンドがありますが、何を自社に導入すべきなのか、その判断ポイントについて見ていきましょう。
自社の風土・ビジョンにマッチするか
評価制度のトレンドを導入する際には、自社の風土やビジョンにマッチするかどうかをしっかり考えておくことが大切です。
たとえばスピード感を重視したい場合と、価値観の浸透を目的にしている場合では、導入すべき評価制度は異なります。また年功序列型の評価制度から、従業員同士での評価を行う制度に移行する場合、戸惑いや混乱が生じることもあるでしょう。
評価制度を導入した場合のシミュレーションをして、自社にとってプラスに生じるのかが一つの判断ポイントになります。
メリット・デメリットが把握できているか
評価制度のトレンドには、それぞれメリット・デメリットがあります。たとえば高頻度でミーティングを行う評価制度の場合、タイミングを逃さずフィードバックできる一方で、部下を多くもつ上司にとっては負担になることもあるでしょう。
また評価項目や評価基準についても、評価制度によってそれぞれ異なります。評価制度のメリット・デメリットについてもきちんと把握して、慎重に見極める必要があります。
プロセスに問題がないか
評価制度の導入に際しては、ルール設定・報酬の連動・説明会の実施・評価者の研修など多くのプロセスが生じます。もし報酬の連動が難しい場合や、評価者の研修に時間がさけない場合などは、評価制度を運用していく上で問題が発生する可能性が高いでしょう。
評価制度の内容だけではなく、導入や運営のプロセスについても確認しておくことがポイントです。
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