近年ニーズが高まっているテレワーク。在宅での勤務を補助するツールの普及もあり、導入する企業は増え続けています。
しかし、いざテレワークを導入するとなると、どのような機材が必要か、滞りなく業務をまわすための注意点は何かなど悩むこともあるでしょう。
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テレワーク環境構築で整備すべき4つの課題
では、テレワークを導入するにあたっての課題や必要なツールなどを見てみましょう。
テレワーク導入で優先的に解決すべき課題は主に、次の4点が考えられます。
労務管理
テレワークを導入するためには、自宅にいながらインターネットを通じて出退勤できるシステム、パソコンログ管理による仕事管理や情報漏洩防止のシステムが必須です。
インターネット上で労務管理ができる環境がない場合は、システムを構築する必要があります。
クラウドサービスを用いて労務管理もできるため、テレワーカーの意見を聞きながら検討しましょう。
またテレワークを導入する場合、就業規則の見直しが必要になります。勤務時間管理、テレワークに関連する費用負担などです。
従来の就業規則にテレワークに関する項目がない場合は、既存の就業規則を改定する、もしくはテレワーク用に別途就業規則を設けるといった対応が必要になります。
②コミュニケーション手段
テレワーカーとは、基本的に遠隔でのコミュニケーションになるため、Web会議システムなどを利用した連絡環境の整備が必要です。社内にモニターとマイクスピーカーを設置して、在宅勤務の職員と会社を常時接続する場合もあります。
③電子化・クラウド化
Adobeが2020年3月に発表したインターネット調査によると、テレワークで業務を行う上での問題として「会社に保管してある紙の書類を確認できない」が39.6%とトップになっています。
また、テレワークで働いているときに判子や書類のサイン、オフィスに置いてある書類の確認で出社した経験が「頻繁にある」という人が約5人に1人、21.4%もいることが分かっています。
参照:Adobe テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査結果
紙媒体を利用した業務を減らすことで、テレワークでできる業務の幅を増やし、業務効率の改善を期待することができます。
④ネットワークインフラ
テレワークで円滑にコミュニケーションをはかるため、業務を電子化するにはネットワーク環境の整備が必須です。
テレワークでは、社外から会社のネットワークに接続し、サーバーやシステムを利用できるように環境構築する必要があります。
また社外からインターネット経由でアクセスする場合、情報漏洩の危険性があるため、ネットワークのセキュリティ対策も重要になります。
テレワークに必要な機材やツール
テレワークの4つの課題を解決するには、下記のようなツールがあります。
労務管理 | 勤怠管理システム、PCログ管理システム |
コミュニケーション | Web会議システム、ビジネスチャットツール |
電子化・クラウド化 | FAX電子化、ワークフローツール、電子契約ツール、クラウドストレージ |
ネットワークインフラ | PCログ管理システム、UTM、リモートデスクトップ、VPNルーター |
①労務管理のツール
テレワークでは、オフィス勤務以上に労務時間の管理が重要になります。
その際に必要なのは、web上でのタイムカード管理、有給や残業なども一元管理できる勤怠管理システムや、誰がいつどのような操作をしたかを記録できるPCログ管理システムなどです。
勤怠管理システムを選ぶ際、アカウントは社員一人毎に紐づくため1アカウントあたりが安価なものを選ぶことが重要です。
②コミュニケーションツール
テレワークでは会議も遠隔で行う必要があるため、WEB会議システムは必須です。ZoomやWherebyといったツールでは、URLを送ることで簡単に会議が設定できます。Slackなどのビジネスチャットツールも、
- 迅速に連絡できる
- 場所を選ばず利用できる
- 仕事とプライベートが区別できる
- プロジェクトや部署単位で情報を共有しやすい
といったメリットがあります。
③電子化・クラウド化
紙媒体で管理されていた資料等を電子化することは、テレワークの効率化を図る上で重要です。
インターネットファックスでは、電話の固定回線とファックス送信機がいらないため、場所を選ばずファックスの送受信が可能です。
また、ファックス専用回線を引く必要がないことや、加えてペーパーレスによるコスト削減もメリットです。さらに、一方的に送られてくるファックスDM(ダイレクトメール)でファックス用紙が無駄になることもありません。
また、ワークフローツールや電子契約ツールを利用すると、煩雑になりがちな書面での決済や承認作業を簡略化させることができます。
ワークフローとは購買申請、承認、発注といった一つの業務に対する一連の流れを意味します。ある業務で誰が作業するか決めておくと、作業者間の情報の漏れをなくすことができます。
このワークフローをPCで自動管理できるようにしたのが「ワークフローツール」です。
ワークフローツールでは、あらかじめ承認者を設定しておくことで、誰がどの業務担当かを確実に把握することができます。製品によっては担当者への自動通知機能などもあるため、スムーズに決済・承認を完結させることができます。
文書を直接やりとりせず、コンピューターのデータとしてやりとりするため効率が上がり、
- 申請書類の管理が複雑で紛失しやすい
- 承認者が不在で対応できない
- 承認者が決まっていないため混乱する
といったトラブルを防ぐことができます。
電子契約ツールでは、煩雑になりがちな書面での契約を電子上で済ませることができます。
またクラウドストレージは、データを格納するためにネットワーク上に設置されたスペースです。パソコンのメモリやファイルサーバーを使わずに、データが保管できます。
ネットワークインフラ
テレワークでは、ネットワークインフラを整備するために有効な機器が多数あります。例として、
- 不正操作などを防止するための、PCログ管理システム
- ファイアウォール、不正アクセス検知機能、アンチウイルスなど総合的なネットワークセキュリティが搭載されたUTM(総合脅威管理)
- 他のユーザーと画面が共有できるリモートデスクトップ
- VPN通信をするための専用ルーター
などが挙げられます。特に、セキュリティ系の機器は優先的に投資すべきと言えるでしょう。
テレワーカーの環境整備も大切
テレワークは、社員が遠隔で業務にあたるため、社員のモチベーション維持や、トラブルに対応できる環境づくりが重要になります。
社員がさぼらない環境を整備する
テレワークでは社員を直接監督できないため、管理者としては従業員の勤務状況に不安を持つかもしれません。
そのような時に、パソコンのログ管理システムを利用することで、社員がどのような行動をしているか把握できます。また、それらのシステムを利用しなくても、WEB会議に常時接続して業務を行う方法もあります。
また評価システムを成果重視にすることも、テレワークでのさぼり防止に効果的です。テレワークを導入するにあたって、評価基準の見直しをはかり、成果重視にすることで社員のモチベーションアップが期待できます。
テレワークでは対トラブルの環境整備も大切
テレワークを導入したものの、逆に業務効率が低下したというケースもあります。原因としては、
- 情報共有が確立されていない
- 機材の初期設定、予期せぬ故障
- テレワーク用の社内ルールが定められていない
などが考えられます。
この場合、ICT環境(コンピュータ周辺環境)の整備をすることが必要です。方法としては、情報共有ツールの導入が有効です。
ツールに搭載されている、スケジュール共有、在籍確認、データ共有、web会議システム、チャットなどの機能を活用することで、遠隔地のテレワーカーとのコミュニケーションを円滑にします。
また、会社から貸与されるパソコンやツールを利用する場合、操作に手間取ったり急な故障が起こる場合も考えられるため、テレワーク用の機材故障受付、端末紛失時のリモートロック対応、などに対処できるヘルプデスクを設置しておくと、テレワーク中のトラブルで作業が止まるのを防ぐことができるでしょう。
テレワークでは、作業分担の見直しも大切です。分業により、在宅でも効率的で円滑な業務体系を整備することで作業ペースを上げることができます。
加えて、定期的に社内ルールや作業環境の見直しも重要です。業務効率を下げている原因を特定することで、より効果的にテレワーク環境を整えることができます。
作業環境の整備
テレワークでは作業環境の整備も大切です。
自宅
オフィスの作業環境は、労働安全衛生法によって明るさ、空調、温度、騒音などが規定されています。
テレワークでは、各自宅の作業環境は異なりますが、厚生労働省から「テレワークに関する環境ガイドライン」が発行されているので、それを目安にして取り入れても良いでしょう。
オフィス
テレワークの導入によってオフィスに余分な空間ができる場合があり、不要なスペースの賃貸契約を解除したり、小規模な事務所に移転する企業も出てきています。
オフィス勤務を避けられない場合は、新型コロナ対策として、社員同士が対面しないデスク配置にする、といった配慮の必要もあります。
安全なテレワーク環境を整備する
テレワークは社内情報を社外で取り扱うため、情報漏洩が不安という管理者の方も多いでしょう。
情報漏洩を防止する運用ルールの設定
テレワークは会社から離れて業務を行うため、社員が無自覚に安全性に問題のあるセキュリティソフトをインストールする可能性もあります。思わぬ情報漏洩を防ぐため、情報セキュリティに関する社内ルールを作る必要があるのです。
セキュリティソフトの導入
社員に貸与するPCなどにセキュリティソフトを導入することは、情報漏洩の危険性が高いテレワークでは必須といえます。
現在は、ウイルスチェック以外にも様々な機能があるソフトが多いので、自社にとって必要なスペックの製品を導入することが重要です。
また、やむを得ない事情で社員の私用パソコンを業務で利用する場合、セキュリティソフトを導入したPCに限定するなどのルールを設ける必要があります。
パスワード管理の徹底
誕生日などわかりやすいパスワードや、パスワードの使いまわしは、不正アクセスの危険性を高めます。
テレワークを導入する際には、パスワード設定のルールをつくる、パスワードマネージャーを利用するといった対策が大切です。
多要素認証も有効
セキュリティ強化として、通常のパスワード設定に加えてSMS(ショートメッセージサービス)のワンタイムコードや指紋認証の追加も効果的です。
近年では、webサービスで多要素認証をサポートしているツールも多くなっています。
ルーターなどの安全性をチェックする
家庭内で業務を行う場合、ルーターなどのネットワーク機器がサイバー攻撃にさらされる危険性もあります。
機器によってはアップデートがされていない、パスワードが初期設定のままという状況も考えられるので、注意が必要です。
業務で使用するアプリやOSは最新版にアップデート
コンピュータウイルス等の脅威は、ソフトやOSの進化にあわせて年々変化しています。
業務で使用するアプリやOSを最新のものにすることで、外的脅威から会社の資産を保護することができます。
VPNの利用
VPN(Virturl Private Network)は、仮想の専用線です。暗号化の技術を使い、公衆のインターネット回線を使用しても安全性を高めることができます。
テレワークでのセキュリティ環境整備のコツ
セキュリティ環境整備で重要なのは、ルールを定めて徹底することです。そして、情報漏洩は自分にも起こりうると認識することです。
情報保守のルールを定めた上でクラウドサービスなどを併用すると、安全性を一段と高めることができます。
テレワーク環境整備を支援する助成金
現在、国が積極的にテレワークを推進していることもあり、テレワーク導入に関する助成金もあります。
2013年に改定された「世界最先端IT国家創造宣言」では「2020年にはテレワーク導入企業数を2012年度比で3倍、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上にする」という目標が掲げられています。
参考:平成25年6月14日閣議決定 世界最先端IT国家創造宣言
1例として、IT導入補助金はITツールを導入するための助成金で、費用の1/2、最大450万が補助されます。サービス業やIT以外の幅広い業種にも対応しています。
助成金の申し込み方法や審査基準は年度によって変わることがあるため、申請時には注意が必要です。
テレワークの環境整備はワークスマイルラボにおまかせ
今回はテレワークの環境整備のポイントについて解説しました。
ワークスマイルラボでは「『働く』に笑顔を!」をコンセプトに、新しいワークスタイルを提案します。
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