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『信金中金 地域・中小企業研究所』にて「働き方改革」の取組みが掲載されました



掲載日:2018年9月3日

http://www.scbri.jp/

2018.9.3 産業企業情報
No.30-10 「働き方改革」を中小企業の成長力強化に結びつけるためのヒント -働きやすい環境整備がもたらす従業員の活性化が生産性をアップ

2.働き方改革で事業継続力向上を実現させている中小企業事例

(1)株式会社石井事務機センター

ワークスタイルの商品化で高収益体質に転換 イ.企業概要 当社は岡山市で 1911 年(明治 44 年)に筆や 墨、鉛筆、万年筆、紙など文具・事務用品を扱 う石井弘文堂として創業、今年で創業 107 年目 となる老舗企業である。戦前には従業員 100 人 規模にまで成長したが空襲で店舗が焼失、終戦 の翌年には営業を再開し、69 年に現社名に改名 して法人化した(図表5、図表6)。 また、先代である3代目がキヤノン株式会社 や株式会社岡村製作所(現株式会社オカムラ) などのオフィス用機器やオフィス用家具の扱い を始め、一般消費者向けから撤退して事業所や 官公庁向けのBtoB販売に特化した。現在は役 職員 32 人、17 年 12 月期の年商は5億 4,210 万 円である。 当社の特長は、顧客企業の生産性向上とその 従業員のワーク・ライフ・バランスを実現するノウハウを 事務用機器に付加したソリューションの提供で差異化す る、他の事務用機器販売会社にはないユニークなビジネス モデルにある。このため、事業内容を「ワークスタイル創 造提案業」としており、今年9月 13 日には社名も株式会 社ワークスマイルラボに改める。 個々の顧客の課題解決に実効性あるソリューションを 提供するため、OA機器など事務用機器、ソフトウエアな どを単に販売するだけでなく、具体的な利用方法について社内制度のあり方など効果的 な導入方法まで含めたトータルの価値として提供している。ターゲット顧客層は、IT や総務などで専門の担当者を置くことができず、効果的な運営・管理に課題を抱えて効 率化・生産性向上への悩みを多く抱えている当社と同程度の従業員 50 人以下の中小企 業である。 実はこのソリューションは、当社自らが実際に社内で導入し実行している様々なワー ク・ライフ・バランスや従業員のモチベーションの向上、人材採用力強化、生産性向上 による収益拡大などの取組成果に基づくものである。つまり、当社自身の働き方改革に よる生産性向上が、顧客企業の働き方改革と生産性向上への実効性の高いソリューショ ンという大きな付加価値を生み出す原動力となっている。

(図表5)株式会社石井事務機センターの概要

社名:株式会社石井事務機センター (18年9月13日に株式会社ワークスマイルラボに 社名変更予定)
代表者:代表取締役社長 石井 聖博(4代目)
所在地:岡山県岡山市南区福浜町15-10
創業:1911年(設立1969年) 資 本 金 5,300万円
年商:5億4,210万円(2017年12月期)
役職員数:32人(役員2人、正社員25人、パート5人)
事業内容:ワークスタイル提案型事務機器販売


このビジネスモデル導入を主導したのが、4代目の現社長である。大学卒業後にキヤ ノンマーケティングジャパン株式会社に3年半勤務した後、2006 年に家業に入り 15 年 に事業を承継した。 ロ.「ワークスタイル創造提案業」への転換経緯と注目すべき成果 当社が働き方改革に取り組んだ経緯は以下 のようなものである。現社長が入社した 06 年 頃は、既に事務用品や事務機器のカタログ販 売・通信販売が幅を利かせ、価格競争も激化 するなど次第に業界環境が厳しくなっていた。 リーマン・ショックの追い討ちもあり、09 年 には先代社長は廃業も考えたが、現社長の経 営改善計画策定などの奮闘もあり、金融機関 の理解を得て再建を目指すこととなった。 11 年にも再び資金繰りが悪化したが、かつ て倉庫だった土地を売却して凌いだ。それと ともに、売却金の一部を専門の担当者を置け ない中小企業のIT管理を代行するパソコン パトロール事業開始の資金とした。この頃は、 従業員のモチベーションも低下しており、I CT関連に舵を切ることへの反発から主力人 材の流出も起こってしまった。そこで、IT サポーターとして新たに人材を採用して 12 年に同事業を開始し、セキュリティ商材とと もに事業は順調に拡大していった。 15 年に事業を承継した現社長は、ICT事業もそれだけではいずれ競争に陥る可能 性があると感じ、再びの経営危機を回避するためにもより差異化された価値を創出する ビジネスモデルを模索し続けていた。そうした折に、女性社員が子育てのために仕事が 思うようにできず、本人だけでなくそれをカバーする周囲にも不満が募るという事態が 発生した。社長は、出社して仕事ができないのであれば自宅でできるようにすればよい のでは、ということから 16 年4月にテレワークを導入した。当初は社内に反対もあっ たが、見える化した公平性のある評価で効果を示すために「1時間当たり生産性」2を 評価指標に採用し、テレワークを行っている従業員の方が生産性は高いという結果を示 し、丁寧に説明することで従業員の意識改革を同時に行った(図表7)。その結果、テ レワーク導入で当社全体として残業時間が半減する一方で、売上高は1割以上増加し利益率も向上している。また、16 年には、働き方改革の実際を顧客に見てもらうため、 ペーパーレスやフリーアドレスの自社オフィスをライブオフィス「ワークスマイルラボ」 (通称「ワクスマ」)とし、後述の「来社型提案営業」を開始した(図表8)。 当社は、経営危機を契機に、どのようなビジネスモデルであれば差異化された顧客価 値を創出できるのか、同時に、そうした価値を創り出す従業員が力を発揮できるワー ク・ライフ・バランスの取れた働き方を選択できる環境はどのようなものが相応しいの かを模索し、自らの実験を通じた課題とその解決方法を見出して行った。従業員満足な くして顧客満足なし、ということであろう。もちろんそこには多数の試行錯誤、失敗も 伴っていたはずであるが、そうした失敗も含めた貴重な経験が机上の空論ではなくター ゲット顧客の共感を得る価値あるノウハウという商材を生み出している。自社の働き方 改革が生み出すビジネスチャンスである。 では、付加価値の源泉となっている当社自身の働き方改革での収益力向上について見 てみよう。図表9のとおり、売上高は 17 年度で5億 4,210 万円と 10 年度比 59.1%増 加、売上総利益率は 17 年度で 36.1%と同 12.2%ポイントも向上している。売上高総利 益率は業界平均を 10%ポイント以上上回っているとのことである。業容拡大にともな い社員数も 28 人と 2.2 倍に増加している。16 年から新卒採用を行っており、19 年度内 定者まで3年連続で5人を採用し、内定辞退者は1名のみである。ちなみに、地元新聞 社調べの 19 年卒業予定の大学生らを対象とした地場企業希望就職先ランキングでは、 名だたる地元有名企業に伍して第9位(前年は 12 位)となり、事業目的や働きやすい 職場環境が学生からも大きく評価されている。顧客課題の的確な把握と自らの経験・実 績に基づく実効性のあるソリューションの提供により差異化された顧客価値の創出に 成功し、事務用機器販売が陥りがちな価格競争から脱却して高収益体質に転換、従業員 満足や人材採用力も向上している。 ところで、当社の営 業は、一般的な顧客企 業に出向いての営業マ ン個人の能力に頼る従 来型とは異なる。実際 に自社で行っているフ リーアドレス、ペーパ ーレス、5Sでの整理 整頓などでの事務効率 化、モバイル機器によ る移動時間などの有効 利用やテレワークによ る在宅等での勤務など、ワーク・ライフ・バランスの達成と生産性 向上の両立について、「ワクスマ」を顧客 が訪れ、実際に業務を間近に見つつ、これ らの効果や最終成果としての業績数値など も開示し具体的な説明が受けられる「来社 提案型営業」である。実際に行っているこ とであり、その導入経緯や効果を実現する ために重要な点を説明する当社従業員には 実体験があるため、説得力・納得性の高い 内容となる。 個々の顧客企業に応じた課題をICTも 活用しつつ、実際にどのような仕組みをどのように導入すれば実効性が上がるのか、機 材やソフトウエアだけでなく利用の仕方までコンサルティングするトータルサービス を提供する。しかも、経営者と従業員双方の立場を理解したうえでのソリューションで ある。このため、取材当日もそうであったが経営者が従業員とともに訪れることもめず らしくないとのことである(図表 10)。 このような取組みの結果、ワクスマ来社数は初年度の 16 年度の 95 社から 17 年度実 績では 363 社となった。来社数のうち案件化社数は 229 社(来社数の 63.1%)、来社 1か月以内の受注実績は 88 件で案件化社数の 38.4%と4割近くにもなっている。 事務用機器や事務用家具は、商品そのものでは特長が出しにくく、顧客は一般的には 価格で選択することが多い。これに対して当社の働き方や生産性向上について実際に見 た顧客は、価格ではなくこのやり方を自社でも取り入れたいという理由、つまり当社の ソリューションのノウハウで選択する。明らかに、他の事務機器販売会社とは差異化さ れた付加価値を創出している。何をどのように売るのか、組織の力を発揮するための従 業員の働き方も含めた価値提供のあり方を追及する注目されるビジネスモデルである。


今後のさらなる展開 これまでの顧客はBtoB企業が多かったが、最近では小売業、飲食業、ホテル業など BtoCも増え始めているとのことである。深刻な人材不足で、働く環境を改善するニー ズがかなり増えていることが背景としている。現在注力中のテレワークについては、岡 山駅近くに当社社員だけでなく、顧客企業が利用できる共有型のサテライトオフィスの 第1号店を9月 13 日にオープンし、安価に利用できるテレワーク環境を整備する。働 きすい環境の整備と次のビジネスの可能性の追求が着々と進められている。今後は、コ ンサル自体を商品化してフィーを得ることをメニュー化したり、当社のワークスタイル 提案型のビジネスモデルをフランチャイズという形で全国展開していくことなども考 えていくということである。石井社長は、経営理念を明確にしたことで何をすべきがが よく見えるようになったとしており、さらなる飛躍が期待される。